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アウシュビッツ訪問記

「君たちに戦争責任はない。でもそれを繰り返さない責任はある。」

(カジミエシュ・スモレン)

昨年、ポーランドにあるアウシュビッツ博物館へ、とんぼ返りで行ってきました。アウシュビッツとは、第二次世界大戦時にナチス・ドイツによって、ユダヤ人をはじめ、ロマ(以前ジプシーと呼ばれた人たち)、障がい者、同性愛者、抵抗するポーランド人、ロシア人捕虜などが大量虐殺(ホロコーストと言います)された場所です。アンネの日記で有名なアンネ・フランクもここに収容されていました。排外主義的な風潮が広がる今の社会が、かつてのドイツやヨーロッパの状況にそっくりだと感じ、いてもたってもいられず、自分の目で確かめたいと思ったのです。

 

第一次世界大戦後、ドイツは大不況に陥っていました。そこに、「ドイツ民族がもっとも優秀で、経済不況の原因はユダヤ人だ」、「ユダヤ人を全滅させる」と主張して台頭したのがヒトラー率いる政党ナチス・ドイツでした。ナチスは、ヨーロッパ中のユダヤ人をゲットーと呼ばれる狭いエリアに住まわせ財産を没しました。やがてそのエリアに収監できなくなると、広大な収容所をいくつも作り数百万人というユダヤ人を送り込みます。狭い貨車に何十人もの人が詰め込まれ、何日もかけて運ばれてきました。その最も大きな収容所だったのがアウシュビッツ収容所です。貨車が到着すると、すぐに多くの女性や老人や子ども、病人や老人などをガス室で毒殺し、そのまま隣の焼却炉で焼却したのでした。亡くなった人の髪の毛を刈り取って洋服にしたり、金歯まで外して再利用したりしたそうです。一方で、虐殺を免れた人は重労働をさせられ、わずかな食事と不衛生な環境で多くの人が亡くなり、収容所から生きて戻れた人はほとんどいませんでした。ここの収容所で百数十万人、ヨーロッパ全体では六〇〇万人が殺されたと言われています。

アウシュビッツ収容所だった場所は今、未曾有の悲劇を二度と繰り返さないための博物館として公開されています。今回、その博物館の案内をお願いした日本人ガイドの中谷さんが紹介してくださったのが、 冒頭の言葉でした。スモレンさんは強制収容所から奇跡的に生還し、その後ここの博物館の初代館長を三〇年にわたって務められ、世界中から見学に訪れる若者に、この言葉を伝え続けられたそうです。ホロコーストと呼ばれる大量虐殺は、ヒトラーという独裁者一人が行ったことではありません。多くのドイツ人がヒトラーを支持し、選挙でナチスに投票したのです。 SS (エスエス)と呼ばれる親衛隊までありました。つまり、 私たちも同じような状況や環境におかれたら、同じことをしてしまうかもしれないということです。そして、まさに今、世界も日本も、そして私たち自身も同じような状況に突き進んでいるのではないかと不安を感じています。

お釈迦さまは「仏さまのお慈悲の前では兵器も武器も要らない」と仰いました。 私たちに戦争責任はありません。でもそれを繰り返さない責任はあります。 2026年の念頭にあたり、戦争のない平和な社会を願いつつ行動していきたいと思います。

補陀落山覚浄寺住職 安食 真城

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